研究概要 |
1.研究目的:産業現場では多種の重金属が使用されていたが、水銀やカドミウムが生体にとって好ましくない作用があることが解かった。鉛の毒性も問題となり、自動車燃料に添加しない方針が国際的に高まった。金属を接着するはんだは錫を主成分とし、少量の鉛が加えてあるが、鉛フリーはんだの開発が進められている。代替金属としてビススマス(Bi)が注目されている。そこで経口摂取したBiの生体内挙動とその毒性について検討した。 2.方法:ICR系雄性マウスを1群当たり20匹、3群を用意した。A群には基礎食、B群には40ppmBi添加食、C群には1000ppmBi添加食を自由に摂取させた。1,4,9,18週目に各群5匹を解剖し、各臓器を摘出し、Bi濃度を測定した。肝と腎についてはcytosol分画を調製し、メタロチオネイン(MT)を測定した。 3.結果:(1)臓器中Bi濃度は腎、肝、脾、脳で1週間後から摂取濃度および期間に依存して増加することが認められた。肺と胸腺では1000ppm群のみが1週目からBi濃度は検出され、摂取期間が長くなると濃度は増加した。膵臓および睾丸でもBiは1週目から検出されたが、40PPm群では9週と18週目のみであった。心筋では1000ppm郡の8および18週目、顎下腺では1000ppm群の18週目のみで検出された。(2)MTは対照群でも検出され、Bi摂取群との問に有意な差は認められなかった。 4.考察と結論:経口的に摂取したBiは40ppm群では肝に、1000ppm群では腎に最も多く蓄積する。殆どの臓器に分布する。しかし体重は対照群との間に有意差はなく、40ppm群では平均値で見ると増加し、1000ppm群ではわずかに低下することが認められた。BiはMTを誘発する元素として知られているが、本実験の摂取条件ではMTの誘発は認められなかった。今後肝機能、腎機能への影響を観察する必要がある。
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