日本において、1960年から1999年までの各都道府県別の農産物生産量並びに作付け面積と、各都道府県別の1999年のパーキンソン病粗死亡率並びに1977年-1985年のパーキンソン病年齢調整死亡率との関係の解析を行った。1999年のパーキンソン病粗死亡率では、すべての分析で有意な関連性は認められなかったものの、1977年-1985年のパーキンソン病年齢調整死亡率との関連では、1960年当時のトウモロコシ作付け面積と負の相関が認められた。1970年、1977年でも同様の相関が認められたが、その関連性は次第に弱くなって行った。現在、パーキンソン病によって死亡する年代が影響を受けた1960年代から1970年代のトウモロコシ摂取が、パーキンソン病発症及び死亡を防いでいることが示唆された。そのほか、米とダイズの生産並びに作付け面積ともパーキンソン病年齢調整死亡率と負の相関を示したが、両者ともトウモロコシの生産とは強い正の相関関係にあり、トウモロコシの影響が関与したものと解釈された。 中国予防医学科学院(現Chinese CDC)の共同研究者と、疫学調査実施に向けて準備を進めてきたが、フィールド予定地域の北京周辺は、重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行のため、渡航並びに調査が不可能となった。現在も可能性を追求しているが、中国では新たに鳥インフルエンザの問題が起こり、当面の調査を断念した。代わりに、中国よりパーキンソン病の診断基準の統一化が進み、ライフスタイルも比較的安定している韓国において、啓明大学医科大学校の予防医学教室と共同で患者対照研究を開始し、食物摂取聞き取り調査並びに血液及び尿の分析による栄養学的アプローチが進行中である。
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