禁煙指導の普及にあたり、個々の症例に合った指導方法の確立をめざして、喫煙関連遺伝子の解析による喫煙に対する個人の感受性要因と、既に禁煙指導の際、普及している呼気中CO濃度の測定、末梢血WBC数、ファガストローム依存度テストとの関連性を検討した。本年度は昨年度収集した症例に対して、遺伝子型同定を行い、他の検査データとの解析を行った。遺伝子型同定は、チトクロムP450 2A6、グルタチオンSトランスフェラーゼ、インターロイキンン1β、5-HTTLPRの遺伝子多型について行った。RFLP法等による同定を塩基配列決定法により確認した。また、ニコチンパッチ使用による禁煙指導とこれら遺伝子多型との関連を検討した。 上記の遺伝子多型の分布はチトクロムP450、5-HTTLPRについて、これまで報告されている一般集団と異なっていた。喫煙者における白血球数はチトクロムP450遺伝子多型の遺伝子型によって異なっていた。禁煙指導に対してはグルタチオンSトランスフェラーゼ遺伝子多型との関連が示唆されたが、ニコチンパッチによる禁煙指導受診者についてはニコチンパッチの影響の方が大きかった。以上より、喫煙行動と関連のあったものは白血球数、飲酒行動であり、遺伝子についてはチトクロムP450、5-HTTLPRの関与が示唆された。一方、禁煙行動については、飲酒行動、禁煙仲間の存在、家族の協力、ニコチンパッチが関連があり、遺伝子についてはニコチンパッチを使用しないで禁煙を指導した群で、グルタチオンSトランスフェラーゼとの関連が示唆された。今回は多くの変数による解析にとっては統計学的に第2種の過誤が生じている可能性があり、喫煙行動および禁煙行動に関与する多くの因子とその交互作用を明らかにするためには、さらに症例を集めて多変量による解析を行う必要がある。
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