研究概要 |
PDDを含む知的障害児に対する虐待の実態を明らかにし,知的障害児の虐待予防における作業療法土の働きかけの有効性を検討することを目的に研究を開始し,14年度は,一般保育園児の親,療育施設に通う知的障害児の親,及び1.5歳児検診で知的障害が疑われたが療育施設に通所していない児(以下非通所児)の親の3群の虐待に関する認識と実態親の生活環境と育児不安,及び求めている援助を明らかにすることを目的に実態調査を行った. 本年度は,「14年度の調査で回収率が33%と低かった療育施設に通う知的障害児の親を対象に追加調査を実施し,3群の虐待に関する認識と実態,親の生活環境と育児不安,及び求めている援助を明らかにすると共に,統計学的分析を行い,以下のような知見を得た。 1.非通所児の母親は、育児ストレスが療育施設に通う児の親ほど高くないにもかかわらず,体罰を使用する率が高かった。その一方で,虐待に関して過剰に意識していた。 2.求めている援助について,非通所児の母親は情緒的援助を求める率が他群より高い傾向にあった。 3.育児ストレスのうち「親自身に関わるストレス」の合計は,3群間に有意差がなかったが,「子どもの特徴に関わるストレス」の合計は,非通所児の母親と療育施設に通う児の母親で有意に高かった。子どもの特徴に関わるストレスの軽減には、母親の育児技術を高めるようなより具体的技術支援が必要だと考えられた。 4.「育児」=「作業活動」、「虐待」=「育児という作業活動の障害」と捉えて、母親自身を対象とした作業療法的介入をすることが虐待予防において有効に機能する可能性がある。
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