研究概要 |
中国ハルピン地区における飲料水中のマイクロシスチン(MC)汚染調査のため、我々は二年間に渡り、肝臓癌死亡率の高い地域の住民が飲用する河、湖沼の水、水道水、井戸水および肝臓癌低死亡率地区の住民が飲用する水道水、水源水、市販ミネラルウオーターをサンプリングし、競合型酵素免疫測定法(ELISA)により、MC含有量を定量した。結果より、ハルピン市内供給用水源はMCにより汚染され、富栄養状態になっていたことが明らかになった。一方、肝臓癌死亡率の高い地域の住民が、現地の低レベル衛生状況と不完全な浄水処理により、MCに慢性曝露される可能性の極めて高いことが考えられた。さらに、我々はチャイニーズハムスター肺線維芽細胞(CHL細胞)を用いた小核試験によりMCおよびMCの同種異型体物質MC-RRの遺伝毒性を調べた。 その結果、MC-LRについて、短時間処理法においては、代謝活性化を用いた+S9法について、6-18時間と6-42時間で小核の誘発頻度は見られなかった。しかし、6-66時間では0.625μg/ml、1.25μg/ml、2.5μg/ml、5μg/mlと10μg/mlの各濃度で、小核の誘発頻度は陽性となった。一方、連続処理の場合、24,48,72時間曝露群の中で24時間では小核の誘発頻度は見られなかったが、48,72時間では,5μg/mlと10μg/mlの濃度で小核の誘発頻度は陽性となった。また、毒性がMC-LRより二番目に強いことが知られているMC-RRについて、短時間曝露と連続曝露を行ったが、小核の誘発は見られなかった。今後、MC-LRの毒性について、コメットアッセイを用いたDNAレベルでさらに詳細に検討することにした。
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