大学生を対象にした、インターネットを介した健康コミュニケーションプログラムを作成するために、初年度として大学生の健康状態の現況について文献調査と実態調査を行った。文献調査は、全国大学保健管理協会の資料やインターネット検索により、大学生年齢の健康上の問題を明らかにした。実態調査は、標的集団である都内N大学の学生に面接法による質的調査を行い、学生が自覚している健康問題を明らかにした。これらの結果を基に抽出した健康問題に対する態度や規範を測定するために、同大学の5学部で300名を対象に質問票による街頭調査を実施した。健康問題としては食生活、予防接種、性感染症予防のためのコンドーム使用に絞り込んだ。態度の測定は期待-価値理論に基づいたFishbeinらの公式を利用した。また、健康行動への動機の強さを探るために、合理的行為理論を基に主観的規範をAjzenらの公式により求めた。その結果、態度については食生活が最も高く、予防接種が最も低かったが、主観的規範については有意差が認められなかった。このことより、食生活については健康への意義を理解しているものの実行が困難と考えているのに対して、予防接種は自己の健康問題としての理解が乏しいものと考えられた。コンドーム利用についてはある程度の理解はあると思われるが、自由記載項目より性感染症予防としての意義をとらえているかは疑問が残る。また、考えられる13の健康問題について順位付けを行わせ、Kendallの一致係数を求めたところ、高い一致性を示し、標的対象集団の認識に同質性があるものと判断できた。文献調査により大学生年齢の麻疹予防接種率が最も低く、成人の麻疹感染が社会問題化してきていることと、実態調査により予防接種に対する行動変容は態度の変容として正確な知識と理解を中心として行える可能性があることにより、次年度に開発するプログラムの課題として麻疹予防が適切であると結論できた。
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