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2002 年度 実績報告書

新規接着因子Ninjurinの強性発現を用いたsenescence分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 14657130
研究機関大阪大学

研究代表者

佐々木 裕  大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (70235282)

研究分担者 外山 隆  大阪大学, 医学部附属病院, 医員
キーワードninjurin / senescence / 細胞周期 / p21 / 肝癌
研究概要

Ninjurinはhomophilicな接着活性を呈する新規接着因子である(Neuron 1996)。我々の初期検討では、肝再生モデルにおいて細胞増殖の停止やその後の分化に関与することが示唆された。そのため強制発現系を用いてninjurinの生理学的な意義を検討した。
Ninjurin1-cDNAをヒト肝癌細胞株Huh-7に遺伝子導入して作製したninjurin1過剰発現細胞株Nin1、Nin2細胞は、親株やmock細胞に比較して形態学的に細胞が大きくて平坦であった。またdoubling timeはmock株が36時間であるのに対して約4日と著明に遷延していた。TUNEL法による解析ではアポトーシスはNin1、Nin2細胞においてはmock細胞より低下していたこと、また細胞周期の解析ではG0/1期の細胞の有意な増加とS期の細胞の低下を認めたことより、細胞増殖の遅延はアポトーシスによるものではなく、G1/S期での停止(Gl arrest)が関与していると考えられた。
そこで次に、G1/S期の代表的な細胞周期関連因子群の発現と活性を解析した。CDK2活性は低下しCDK阻害剤であるp21蛋白発現が増強していた。p21は主にcyclin-CDK2複合体に結合してCDK活性を低下させ、Rb蛋白の燐酸化を阻害して最終的にはG1 arrestを誘導することから、ninjurin1の過剰発現はp21-CDK2系を介して細胞周期をG1/S期で停止させるものと考えられた。
このようなninjurin1過剰発現により認められた3つの細胞生物学的特徴(大きく・平坦な細胞形態、細胞周期のG1/S期での停止、p21発現の亢進)は、細胞分裂の終末像と考えられているcellular senescenceの特徴と一致していたため、ninjurin1によりcellular senescenceが誘導されるかを検討した。βガラクトシダーゼ陽性細胞はmock細胞においてほとんど認められなかったのに対してNin1、Nin2細胞では20%強の比率で認められた。また蛍光顕微鏡像およびflow cytometerによる解析においてNin1、Nin2細胞では自家蛍光が増強していた。これらの結果から、ninjurin1の過剰発現は癌細胞にcellular senescenceを誘導することが明らかとなった。
Cellular senescenceは近年、強力な癌抑制機構の1つと考えられており、今後、ninjurinによるsenescenc誘導のメカニズムの解析と、発癌への関与を検討していく予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (7件)

  • [文献書誌] Kawai, N., et al.: "Tumor necrosis factor-α simulates invasion of Src acivated intestinal cells"Gastroenterology. 122. 331-39 (2002)

  • [文献書誌] Kakiuchi, Y., et al.: "Cyclooxygenase-2 activity altered the cell-surface carbohydrate antigens on colon cancer cells and enhanced liver metastasis"Cancer Res.. 62. 1567-1572 (2002)

  • [文献書誌] Jinushi, M., et al.: "Critical role of MICA/B expression on interferon α-stimutaled dendritic cells in NK cell activation : Impairment in chronic hepatitis C virus infection"J.Immunol.. 170. 1249-1256 (2003)

  • [文献書誌] Jinushi, M., et al.: "Expression and role of MICA and MICB in human hepatocellular carcinomas and their regulation by retinoic acid"Int.J.Cancer. 104. 354-361 (2003)

  • [文献書誌] Miyagi, T., et al.: "CD1d-mediated stimulation of natural killer T cells selectively activates hepatic natural killer cells to eliminate experimentally disseminated hepatoma cells in murine liver"Int.J.Cancer. (in press).

  • [文献書誌] Iyoda, K., et al.: "Involvement of the p38 mitogen-activated protein kinase cascade in human hepatocellular carcinoma"Cancer. (in press).

  • [文献書誌] 外山 隆, 佐々木 裕, 林 紀夫: "「Annual Review消化器2002」肝臓7.肝細胞癌の病態と診断(分担)"中外医学社. 4 (2002)

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公開日: 2004-04-07   更新日: 2016-04-21  

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