活性酸素・窒素種等のラジカル分子は、気道の上皮傷害や微小血管透過性亢進といった直接的作用に加え、蛋白分解酵素の活性中心である亜鉛原子付近のシステイン残基の酸化を介して同酵素の活性化を促し、慢性閉塞性肺疾患の病態に関わっていると考えられる。今回の研究の目的は、慢性閉塞性肺疾患の肺・気道の局所で過産生状態にある活性窒素種が引き起こす直接的な肺胞・気道壁傷害の機序を、DNAのグアニンのニトロ化を検討することで明らかにしょうとするものであった。 本年度は、臨床症状、呼吸機能検査、画像検査から診断が確定した慢性閉塞性肺疾患で、過去3ヶ月間ステロイドの投与を受けていない患者を対象として臨床的検討を行った。尚、検討前に患者さんに検査の内容、得られる結果、危険性等について文書(東北大学臨床研究応用についての倫理審査委員会で認められたもの)で説明し、同意を得られた方のみを検査に組み入れる。得られた検体についても責任を持って保管し、患者さんのプライバシー確保に留意した。気管支鏡のチャンネルを通してマイクロサンプリングブローベを挿入し、気道被覆液サンプル(約15μl)を採取し、スーパーオキサイド産生酵素である、ザンチンオキシデース活性を測定した。その結果、慢性閉塞性肺疾患患者では、健常人に比べ気道でのザンチンオキシデース活性が有意に増加していた。手術で得た組織標本の凍結切片を作成し、ザンチンオキシデースの免疫染色をしたところ、慢性閉塞性肺疾患患者では、マクロファージ、気道上皮で免疫活性が上昇していた。
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