下気道感染や肺炎が感冒に続発しておきることはよく知られている。感冒は若年者ではそれほど問題にならないが、高齢者では続発する肺炎により生命の危機にさらされる可能性がある。感冒引き起こす代表的ウイルスであるライノウイルスに対するマクロライド抗菌薬の予防効果を検討した。 これまでの一連の検討より多数グループに属するライノウイルスはICAM-1を介して、少数グループに属するライノウイルスはLDL受容休を介して気道上皮細胞に侵入することを明らかにしてきたが、本研究によりエリスロマイシンがICAM-1受容体の発現を抑制して多数グループに属するライノウイルス感染を抑制することが示された。しかし、エリスロマイシンのLDL受容休発現抑制効果は少なく、エリスロマイシンが少数グループに属するライノウイルス感染を抑制する機序は細胞内小器官の酸性化を阻害することによることを明らかにした。以上、人気管培養上皮細胞を用いた検討よりエリスロマイシンは異なる2つの機序によりライノウイルス感染を阻止し得るものと考えられた。 高齢者に多い慢性閉塞性肺疾患患者の急性増悪は主に感冒罹患後におこる。上述の研究よりエリスロマイシンはライノウイルス感染を抑制する可能性があるため、1年間に生じた慢性閉塞性肺疾患患者の急性増悪の回数をエリスロマイシン投与群と非投与群で比較した。結果は、エリスロマイシン投与により慢性閉塞性肺疾患患者の急性増悪の危険性が約5分の1に減少したことより、エリスロマイシンは感冒罹患に対し抑制効果をもつと考えられた。 以上より、マクロライド抗菌薬は高齢者呼吸器感染予防に有用と思われる。
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