研究概要 |
最近、動脈硬化との関連が深い酸化LDLに含まれ、血管内皮細胞の透過性亢進などに関与していると考えられている物質が、リゾホスファチジン酸(LPA)であることが明らかになり、LPAが動脈硬化などの循環器疾患の分子マーカーである可能性が考えられるようになってきた。そこで、LPA測定法を確立し、循環器疾患におけるその血漿中濃度とその意義について解析することを本研究の目的とした。 本年度は、LPA濃度測定のアッセイシステムの確立を行い、LPA解析に向けた循環器疾患患者のサンプル(血漿)の採集・保存をスタートさせた。 LPA濃度は、Sebastienらの方法を改良して測定した。測定サンプルを1-ブタノールによって抽出し、抽出された脂質成分をアッセイバッファー(20mM Tris(pH7.5),20μM sodium orthovanadate,1mg/ml Tween20,1μl[^<14>C]oleoyl-CoA,適量のLPA acyltransferase(LPAAT)Lリコンビナント酵素)に溶解し、20℃、120分間インキュベートした。その後、反応を停止させた後、メタノール・クロロホルムにて生成[^<14>C]PAを抽出し、一次元薄層クロマトグラフィーにて展開・分離後、[^<14>C]PAのスポットの放射能活性をカウントした。精製LPAを用いて検討し本アッセイの感度を検討したところ、LPAが約10pmole以上の範囲で測定できることが明らかになった。そこで、健常成人の200μlのサンプルからLPAを測定したところ、プレリミナリーな結果であるが、血漿中LPAは約50nM、血清(血液を37℃、6時間インキュベートした後の血清)LPA濃度は約800nMであり、血小板凝集によりLPAが血清中に著増することが確認された。今後、現在採取・保存を始めているサンプルにおけるLPA濃度を順次測定していく予定である。
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