研究概要 |
i)平滑筋前駆細胞の同定と分化における転写因子の役割:現在までセルソーターと適切なフィーダー細胞の使用、培地条件の調整により、nestin^+, p75NGFR^+の幹細胞の形質をもったマウス神経堤細胞の単離培養を実現した。この細胞はOP9細胞上でnestin^+を維持しながら継代可能であったが、ダリア細胞への分化が自発的に進むため、その培養条件の検討を行っている。一方。未分化神経堤細胞は10%胎仔ウシ血清+10%鶏胚抽出液存在下により、平滑筋分子マーカーを発現する細胞への分化が促進した。血管平滑筋分化に必須であるdHAND遺伝子の導入は、むしろ最終分化を抑制し、この転写因子が分化の中間段階の維持に必要であると考えられた。 ii)平滑筋前駆細胞の単離、株化:我々はすでに、ET-A受容体(ETAR)遺伝子プロモーターによって蛍光蛋白GFPを発現させるトランスジェニックマウスを作成し、その発現パターンとソーティングによる発現遺伝子の解析から、GFPが鰓弓へ遊走する神経堤細胞および血管平滑筋細胞の一部に発現していることを明らかにした。さらにこのプロモーターを用い、これらの細胞にトリレトロウイルス受容体TVAを発現させることにより、細胞特異的遺伝子導入の系を樹立した。このマウス胚より切り出して培養した神経堤細胞,鰓弓の神経堤由来間葉細胞に対し、GFPを組み込んだトリレトロウィルスを感染させ、GFPによる蛍光シグナルが認められた。この系を用いて、血管平滑筋分化を制御する細胞内シグナルの解析が進むことが期待される。
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