【目的】 Stefanadisらによって不安定プラーク(vulnerable plaque)の診断が温度測定により可能であることが報告されたが、粥腫温度は冠動脈血流により冷却されている可能性がある。そこで本研究では、血管傷害モデルにおいて傷害部の温度が上昇するか否か、粥腫温度へ冠動脈血流が影響するか否かを検討した。 【ex-vivo実験】 ポリエチレンチューブ(1)(血管に相当)の外側にポリエチレンチューブ(2)を長さ5cmにわたり巻き付けるモデル(不安定プラーク部に相当)を作製し、それぞれのチューブを37℃の生食で灌流させた。4本の骨材の頂点に熱電対型温度センサーを組込んだバスケット型温度測定カテーテルをチューブ(1)の不安定プラーク部に挿入し温度を測定、ついでチューブ(1)の灌流を止め、その後の温度変化を連続的に測定した。 【動物実験】 豚の冠動脈をバルーン、ステント留置で傷害し、2週間後に血管傷害部位の温度を測定、近位の非傷害の温度と比較した。ついで、温度センサーのワイヤーを血管傷害部位に固定し、近位部で空気によりバルーンを拡張させて血流を遮断し、その後の温度変化を計測した。 【結果】 1)ex-vivo実験:不安定プラークに相当する部位の温度は、チューブ(1)の灌流を遮断すると直ちに上昇し、数秒後にピークとなりその後安定した。 2)動物実験:2週間後の造影で血管傷害部位には軽度の狭窄を認めた。血流を遮断しない状態では傷害部とその近位部とで温度差はなかったが、血流を遮断させることによってバルーン傷害部、ステント傷害部ともに近位部に比較し温度が高いことが明きらかとなった。その程度はステント傷害部のほうが高度であった。 【結語】 血管傷害部に一致して局所の温度は上昇しており、この温度測定においては血流によるcooling効果を考慮する必要があることが明らかになった。
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