1)特徴的な顔貌で、2)MRSAによる皮膚膿瘍、骨髄炎、pneumatocele等繰り返す感染巣が存在し、3)血清IgE値が1万-10万IU/mlという条件で3名の該当患者を見出し、解析を行った。臨床的にはST合剤および予防的抗真菌剤投与が奏功し、感染症は概ねコントロールされている。今年度は高IgE症候群患者に特有な末梢血リンパ球サブセットの発見と病態との関係について研究を行った。3名の患者の内2名では、末梢血中に明らかにCD3+CD56+T細胞が増加していた。しかし、このCD3+CD56+T細胞は、当初予想していたCD3+CD56-TCRVα24陽性NKT細胞とは明らかに異なるNKT細胞集団であった。また、1名のCD3+CD56+NKT細胞の増加が認められなかった患者は、背景にXYYという染色体異常が存在する患者であり、高IgE血症を呈する機序が、他の2名の患者とは異なっていることが示された。増加していた2名の患者のCD3+CD56+T細胞には、HLA-DR抗原、CD69と言ったNK細胞活性化マーカーは認められなかった。一方、このNKT細胞とは別にCD3+T細胞の中には、CD56-CD94+TCRγδ+T細胞が増加しており、これらの細胞はCD161+であったことよりメモリータイプのT細胞であることが示された。また、その発現はCD4+あるいはCD8+といった特定のリンパ球サブセットに特有ではないことも確認できた。CD3+T細胞上にVβ陽性細胞の特異的出現は認められなかった。また、CD3+CD56-TCRVα24陽性NKT細胞で問題となるCD1dの発現亢進は、B細胞および単球では認められなかった。今回の研究では、高IgE血症患者末梢血には3名中2名の患者に共通に、1)CD3+CD56+NKT細胞の増加、2)CD3+CD56-CD94+TCRγδ+T細胞の増加という2つのリンパ球サブセットの異常が存在することが明らかになった。1)と2)の組み合わせのどちらもが高IgE血症の発症に重要な意味を有しているのか、あるいはどちらかが重要で、他の一つは二次的な変化なのかは、今後の症例の蓄積により明らかにされるべき課題である。
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