研究概要 |
1、培養ヒト皮膚線維芽細胞からmRNAを抽出し,発現しているヒアルロン酸合成酵素(HAS(HAS1,HAS2,HAS3))の各遺伝子full-length cDNAを調整した。これをBluescript vectorにサブクローニングして大量に調整し、その塩基配列をautosequencerで解読した。次に各cDNAをBluescript vectorから再度切り出し、Neomycin耐性遺伝子の挿入されたpCY4Bタンパク質発現ベクター(pCY4B-Neo)(大阪大学 宮崎純一教授より分与)に組み込み、HASの発現ベクターであるHAS(-1,-2,-3)-pCY4B-NEOを調整した。 2、各発現ベクターを培養ヒト皮膚線維芽細胞のcell lineにDOTAP法によって導入した。数日ごとにNeomycinでselectionを行って、最終的にすべての細胞の染色体にHAS遺伝子がstableに組み込まれたものになるまで細胞培養を繰り返した。 3、得られた各細胞の培地を回収し、培地中に分泌されるヒアルロン酸量をカルバゾール硫酸法およびセルロースアセテート膜電気泳動等により解析した。その結果、HAS-1,-2,-3遺伝子の挿入された細胞の培地中に非常に高レベルなヒアルロン酸分泌量の上昇を確認した。 4、各HAS遺伝子がstableに導入された細胞および導入されていない細胞からそれぞれmRNAを抽出し、cDNAを調整した後、各細胞における遺伝子の発現動態をSerial analysis gene expression (SAGE)法によって解析した。すなわち、制限酵素消化,リンカーライゲーション及びPCR法によって,発現するすべての遺伝子の3'末端11bpを調製し、これらをライゲーションによって互いに結合させ,autosequencerを用いてその塩基配列を決定した。その結果、HAS遺伝子が導入された細胞で顕著に発現する,或いは抑制する遺伝子として29種類の遺伝子が確認された。現在、その遺伝子が皮膚再生のマスター遺伝子かどうか検討中である。 5、また同時に、今回確認された29種類の遺伝子をさらにpCY4B-NEOベクターにサブクローニングしnaked DNA法を用いてヌードマウスの瘢痕部に導入する準備をすすめている。
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