研究概要 |
今年度は、ヒト皮膚真皮線維芽細胞のうち、新生児皮膚網状層線維芽細胞と成人頭皮毛乳頭細胞とを比較検討した。新生児皮膚線維芽細胞は、Kurabo Industries Ltd., Tokyo, Japanより購入した。毛乳頭細胞は、Messenger (Messenger, 1984)の方法により、実体顕微鏡下に単離した毛乳頭を培養したものを用いた。いずれの細胞も、継代3-4代目の細胞を使用した。ほぼconfluentな状態になった培養細胞から、guanidinium thiocyanate法によりRNAを回収し、GAPDH, TNF-a, IL-1b, IL-12p40, IL-6, IL-8, IL-10, basic fibroblast growth factor, keratinocyte growth factor, insulin-like growth factor, transforming growth factor-β1, β2, hepatocyte growth factor, Noggin, leptinに関して、半定量的RT-PCRにより線維芽細胞と毛乳頭細胞でmRNA発現を比較した。まず、我々が既に報告しているように毛乳頭細胞と線維芽細胞では、leptin mRNAの発現に明らかな相異を認めた。Leptin mRNA以外では、ほぼ検討した全てのサイトカイン、成長因子のmRNA発現に著しい相異を認めなかったが、毛乳頭細胞でTGF-β2の発現が亢進していることが明らかになった。TGF-β2は、最近、毛周期を休止期に誘導するのに関与すると言われているサイトカインで、培養毛乳頭細胞が、休止期の形質を有していることが示唆された。
|