研究概要 |
今回の解析に用いた乾癬患者の臨床的プロファイルを以下に示す。総患者数は82名(男57名;女25名)で年齢は9-79歳(平均49歳)であった。尋常性乾癬患者は49名であり,関節炎を伴った尋常性乾癬患者は20名,紅皮症性乾癬9名,膿庖性乾癬3名であった。重症度の判定は主にPASIスコアを用いて行い,治療等のパラメーターも確保している。患者の同意取得後,末梢血からgenomic DNAを分離し,遺伝子解析を施行するとともに血清学的にHLAタイピングを行った。 血清学的なHLAタイピングでは日本人乾癬患者に高率に認められるとされるHLA-Cw6は9名,HLA-Cw7は33名であった。遺伝子解析は最近,乾癬の疾患感受性遺伝子の可能性が示されつつあるHLA-C領域近傍に位置し,遺伝子配列がわかっているOTF3(OMIM 164117),HCR(OMIM 6505310),TCF19(SC1;OMIM600912),corneodesmosin(CDSN ; OMIM 602593)を中心に解析した。解析にはsingle-nucleotide polymorphisms(SNPs)を用いたが,詳細な情報は英国のトレンバス博士よりの上記の遺伝子SNPs解析結果を参考として行った。その結果として,乾癬患者にはHCRが他の遺伝子と比較し相関が高い傾向が得られた。特にHCR SNP haplotypeのうち,HCR^*WWCCはHLA-Cw6と強い連鎖不平衡にあることが確認された。既にHCR蛋白が乾癬病変部位で強く発現しているとの報告からも興味深い結果と考えられる。このように乾癬発症の基盤となるHLA-C領域の解析がほぼ完了しているので次年度には今回のテーマに的を絞り,研究を行う予定である。
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