当研究は、我々が開発を行ってきた低酸素状態での放射線照射によって活性化される5-フルオロデオキシ-2'-ウリジン(FdUrd)のプロドラッグを改良し、その化学的特性と生物効果について検討を行うことを目的とした。FdUrdは水溶性が高く、細胞内への取り込みが遅いことが考えられるので、脂溶性の側鎖を結合させることによって細胞内への取り込みを向上させることを考えた。まずFdUrdの細胞内への取り込みについて、5-フルオロウラシル(5-FU)との比較のもとに検討したところ、ヒト膵癌細胞において、5-FUに比べてFdUrdの取り込みがやや遅延することが確認された。この戦略で合成した数種類のFdUrdのプロドラッグについて検討を行ったが、水溶液中においては、低酸素下放射線照射によって5-FUのプロドラッグと同等に活性化されることが判明した。しかし培養液中においては、FdUrdの遊離は側鎖の構造によって大きく異なるとともに、水溶液中に比べて全般的に減少した。これは培養液中に含まれるアミノ酸が水和電子と結合するためと考えられた。培養液中でFdUrdの遊離比率が最も高かったOFU106について、その効果を詳細に検討した。In vitroでは、OFU106を培養細胞に接触させ、ともに低酸素状態としてから照射を行い、その後24時間細胞と接触を続けた場合、顕著な殺細胞効果の増強が認められた。増感率は0.04mMの濃度において1.35-1.4、0.2mMの濃度において1.45-1.5であった。平成15年度はin vivoにおいても評価を行っていく予定である。
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