簡易連続型超偏極希ガス生成装置の試作と水素や炭素核の高感度MRI実験への応用

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14657215
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 藤原 英明 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90107102)
• 研究分担者: 木村 敦臣 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (70303972)
• キーワード: 超偏極希ガス / NMR / MRI / Xe-129 / 磁化移動 / 二次元NMR / 磁気的相互作用

研究概要

磁気的に高度に偏極させた超偏極Xe-129ガスを利用して水素や炭素核など他核への磁化移動を試すのが本実験の目的である。我々が試作した簡易連続使用型超偏極装置に改良を加え、3-5%の偏極率のXeガスの安定供給を可能にした。この装置を用いて以下の実験を行った。
1)Xe-129からH-1への磁化移動実験。
他核間のオーバーハウザー効果(HOE, Heteronuclear Overhauser Effect)を観察するためのパルス系列を作成した。このパルス系列でXeの180°とHの90°パルスの間の待ち時間τを変えながらHOEの測定を行った。メタノールと水の1:2混合溶液についての測定では、牛血清アルブミン(BSA)の共存の有無により信号強度の変化の様子は大きく変わり、BSAなしでは、水信号が0.3%の信号強度増大が認められたが、メタノールの信号強度変化は非常に小さかった。これに対して、BSA20mg/mlを溶かした場合は、水信号に強度変化は認められなかったが、メタノール信号に最大25%の信号変化(減衰)が認められた。これらの系では、Xeの溶存量は多くないので、もっと高濃度のXeが共存できる条件の確立が必要であった。
2)Xe-129とH-1の二次元NMR実験。
いわゆるhoesyの二次元実験によりXe-129とH-1の磁気的相互作用が観察できるので、このパルス系列を作成し、簡単な系に適用した。α-シクロデキストリンのDMSO溶液にXeガスを吹き込みつつhoesy実験を行うことにより、交叉ピークが観察された。この交叉ピークは、文献に報告されている上述のHOE実験で観察された信号変化と整合性のあるものであった。超偏極希ガスを用いた二次元実験は、これまでEXSY系列について報告されているだけであるので、ここでのhoesy実験は超偏極Xeガスを使ったhoesyとしては始めての実験例となる。

研究成果

• [文献書誌] K.Saito, A.Kimura, H.Fujiwara: "The Study of Xe Adsorption Behaivior in Meso-Size Pores of Carbon Black Materials using Laser-Polarized 129Xe NMR Spectroscopy"Mag.Reson.Imag.. 21. 401-403 (2003)
• [文献書誌] H.Fujiwara, A.Kimura, T.Wakayama: "Hyperpolarized Xe-129 as a Novel Probe Agent of Lung Functions in MRI and MRS. Exrperimental Results with Mice at 9.4T"Proceedings of the International Workshop on Quantitation in Biomedical Imaging with PET and MRI (Elsevier). (2004)
• [文献書誌] Y.Kawata, T.Kamiya, H.Miura, A.Kimura, H.Fujiwara: "Practical Application of NMR Spectra of ^<129>Xe dissolved in Red Blood Cell"Proceedings of the International Workshop on Quantitation in Biomedical Imaging with PET and MRI (Elsevier). (2004)
• [文献書誌] M.Narazaki, T.Wakayama, A.Kimura, H.Fujiwara: "MRI and MRS of hyperpolarized ^<129>Xe in the Chest of Mouse. Effect of Contrast Agent on the MRS"Proceedings of the International Workshop on Quantitation in Biomedical Imaging with PET and MRI (Elsevier). (2004)
• [文献書誌] T.Wakayama, T.Oose, M.Narazaki, A.Kimura, H.Fujiwara: "MRI and MRS of Mouse Head at 9.4 T Using Hyperpolarized Xenon Gas"Proceedings of the International Workshop on Quantitation in Biomedical Imaging with PET and MRI (Elsevier). (2004)