研究概要 |
我々は、統合失調症(精神分裂病)における、幹細胞の機能不全を想定し、幹細胞の分化・成長に深く関与するとされるポリシアル酸(polysialic acid)のふたつの合成酵素,すなわち,polysialyltransferase (PST)とsialylatetransfertase X (STX)の遺伝子多型を統合失調症において検討した。本研究は精神分裂病仮説として幹細胞の機能不全を想定して,それを検証するために,これまで試みられたことのない酵素の遺伝子解析を進めた。研究途中で、新井らが第36回精神神経系薬物治療研究報告会(平成15年12月に)、我々の研究と同様の研究を進め、PSTとの相関は認めず、STXのプロモーター部位での相関を見出した。ゆえに我々の研究はSTXに焦点を絞り、彼らと連絡を取り合い機能面での解析を行った。すでにオーストラリアとの共同研究で、統合失調症、躁鬱病患者における皮膚のファイブロブラストの培養を行い、疾患感受性遺伝子候補の同定の準備をすすめていた。ゆえに今回はこれらの皮膚細胞におけるSTXの発現量の解析を行った。 対象は統合失調症10名、躁鬱病10名、コントロール10名である。各々の皮膚生検を行なっファイブロブラストよりT-RNAを取り出し、それらについて、STXのc-DNA配列より、タックマンプローベ法に基づくプローベ、プライマーを設計し、リアルタイムPCRをABI PRISM 7900HT Sequence Detection Systemを用いて行なった。GAPDH補正したデータはコントロールが平均7.3、統合失調症が6.8、躁鬱病が7.8と、統合失調症はコントロールと比べて低い値は示し、躁鬱病はコントロールと比べて高い値を示したSTXの活性の違いが疾患に何らかのかかわりがあることを示された。また、統合失調症と躁鬱病の発症メカニズムの相違が伺われた。
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