研究概要 |
本プロジェクトの第一段階として造血幹細胞によるホーミング現象そのものの性質を明らかにすることを目的とし、骨髄移植後におこると予想される造血幹細胞の骨髄への到達状況を表面マーカーを利用して定量的に解析することを試みた。血液細胞がほぼ100%GFPを発するB6バックグランドのGFPトランスジェニックマウス全骨髄細胞2×10^7個を致死量放射線照射したB6マウスに移植し、移植後経時的(3,6,12,24,48時間後)にレシピエントマウスの骨髄および脾臓から細胞を回収し、FACS多重染色にてc-Kit+Sca-1+Lin-(KSL)細胞中のGFP陽性の割合を計測した。その結果、移植後6時間から12時間後に骨髄中に再現性を持ってGFP陽性KSL細胞の出現ピークが観察された。脾臓には移植直後からGFP陽性のc-Kit+Sca-1+Lin-(KSL)細胞の集積が認められたが、明確なピークは存在しなかった。以上のデータはKSL細胞中に含まれる未分化な造血前駆細胞が移植後に骨髄にホーミングすることを示唆している。しかし、これはあくまで造血前駆細胞をマーカーで見ているだけであり、本当に移植後の造血幹細胞に骨髄出現ピークがあるかどうかを機能的に確認する必要がある。現在、in vitroコロニーアッセイ法(HPPCFU)やin vivoにおける長期骨髄再建能など、機能アッセイにより確認している。一方で、発現クローニングに使用する標的細胞のスクリーニングを行った。未分化な造血系の細胞株であるMEL細胞やB細胞系の細胞株であるBaF3細胞などにGFP遺伝子を導入してマーキングし、放射線照射したマウスに移植して何も遺伝子導入していない状態で骨髄へのホーミングを解析した。BaF3細胞は骨髄からほとんど回収することができなかったが、MEL細胞はある一定の頻度で回収することができた。
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