研究課題
昨年度は骨髄移植後の造血幹細胞の骨髄への到達状況について表面マーカーを利用して定量的に解析し、移植後6時間から12時間後に骨髄中に再現性を持ってGFP陽性c-Kit+Sca-1+Lin-(KSL)細胞の出現ピークが観察されることを明らかにした。また、脾臓には移植直後からGFP陽性KSL細胞の集積が認められたが、明確なピークは存在しなかった。しかし、これはあくまで造血前駆細胞をマーカーで見ているだけであり、本当に移植後の造血幹細胞に骨髄出現ピークがあるかどうかは不明であった。そこで今年度は機能的な側面から造血前駆細胞のホーミングを解明することを目的として研究を進めた。FACSで骨髄細胞中のCD34-KSL細胞(造血幹細胞)、CD34+KSLFLT3+細胞(造血前駆細胞)、CD34+KSLFLT3-細胞(より未分化な造血前駆細胞)の3つの分画の細胞をソーティングし、それぞれ200個の細胞を致死量放射線照射したマウスに移植した。移植1日後、2日後、3日後に脾臓細胞および骨髄細胞を回収してコロニーアッセイを行ったところ、いずれの分画も移植1日後では脾臓にのみコロニー産生細胞の存在を認めた。CD34-KSL細胞およびCD34+KSLFLT3-細胞を移植した群では2日目から骨髄にコロニー産生細胞を認め、3日目にかけてその数は増加する傾向が見られた。一方、CD34+KSLFL3+細胞を移植した群では脾臓でのコロニー産生細胞が移植1日後には認められたものの、2日目以降は減少した。骨髄には1日目2日目ともに頃に産生細胞を認めなかったが3日目よりその数は急増する傾向が認められた。このように、造血幹細胞や未分化な造血前駆細胞のホーミングはいきなり骨髄に行くよりも一度脾臓に行ってある程度分裂してから骨髄に移動する可能性が強く示唆される結果となった。一方で、造血前駆細胞の分化段階によってホーミングの場所が異なる可能性も示唆されており、ホーミングレセプター発現クローニングに用いる細胞の種類や細胞を回収する組織について貴重な情報が得られた。
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