研究概要 |
近年、従来の発生学の常識からは考えにくい幹細胞の可塑性を示唆する報告が相次ぎ、再生医学の萌芽となりつつある。すなわち、それぞれの組織は胚葉起源を越えて他の組織構成細胞に分化できる幹細胞を含んでいる可能性が示されている。しかし、まだ骨髄細胞を放射線照射マウス個体に導入し、ドナー由来の細胞が肝細胞、神経細胞、筋細胞などへ分化することが示されているのみであり、その分子メカニズムや再生医学への応用については未知の点が多い。これらの点を明らかにするため、本研究ではまず、この造血幹細胞の発生過程にかかわる遺伝子発現のプロファイルを解析し、Notch分子の発現の相違を明らかにした。造血幹細胞はマウスでは胎生期9.5日目のparaaortic-splanchnopleura(P-SP)領域から発生してくる。この領域を組織培養系を用いて解析した結果、この領域ではNotch1およびNotch4の発現が認められるが、OP9細胞を用いて造血細胞および血管内皮細胞への分化を誘導すると、それぞれNotch1+,Notch2-,Notch4+、およびNotch1+,Notch2+,Notch4-となることが明らかになった。このことから少なくともこの分化の振り分けにはNotch分子が重要な役割を担うと推測された。現在、GFPトランスジェニックマウス骨髄より幹細胞を含むLin-/c-kit+細胞分画を採取し、放射線照射マウスに静脈内投与により移植し、GFP陽性細胞をマウス脳内から採取して神経特異的マーカーであるNeuNやTrk-Rなどを発現する時期を決定すべく研究を行っている。
|