研究概要 |
平成14年末にドナーリンパ球輸注(DLI)を行った慢性骨髄性白血病患者について、抗原特異的なT細胞の増殖の有無を調べたところ、これまでの4例と同様に、DLI後8週の末梢血においてBV11陽性T細胞クローンの一過性増殖が認められた。このT細胞はCD4陽性であった。このT細胞がDLIによって患者に移入されたものか、あるいは元々患者の流血中に存在していたものかを明らかにするため、T細胞クロノタイプ特異的なreal-time PCRを用いてT細胞の定量を試みている。一方、この患者のBV11陽性T細胞クローンについては、類似のクロノタイプを持つ既知のT細胞クローンを見出し得なかったため、以前の研究で同定した多型接着分子がマイナー組織適合抗原(minor histocompatibility antigen, mHa)として機能するか否かを検討した。平成14年度の研究により、多型接着分子の一つCD62LがGVHD方向に不一致である場合に限り、白血病の再発率が有意に低下することが明らかとなった。症例を追加した本年度の研究により、HLA-A24陽性例のみを対象とした解析でも同様の結果が得られた。そこで、CD62Lの多型部位を含む9種類のペプチドを作成し、GVHD方向に不一致を示すHLA-A24陽性患者5例の移植後T細胞を、ペプチドでパルスした樹状細泡で刺激したところ、一部のペプチドがインターフェロン産生を誘導した。また、そのペプチドの一つCD62L^<206-21 IS>を用いて骨髄T細胞を繰り返し刺激したところ、ペプチド特異的な細胞傷害活性を有するCD8陽性T細胞株が樹立できた。このペプチドとHLA-A24によるテトラマーを作製したところ、ペプチド特異的なCD8陽性T細胞の中にテトラマー陽性細胞が検出された。以上から、CD62L^<206-21 IS>はHLA-24拘束性のmHaとして機能している可能性が示された。
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