研究概要 |
本研究では、造血幹細胞と血管前駆細胞の遺伝子発現をDNA arrayを用いて、系統的に解析しその異同を明らかにすることを目的とする。ここでは、未分化細胞集団に限定し、しかもin vitro培養系において、高率に純化された細胞群を対照として用いる。 今年度は以下のことを明らかにした。 1)マウス骨髄細胞より蛍光色素排出率の高いSide Population(SP)いわゆる幹細胞集団を分離し、さらに多様な抗体を用いて、従来の幹細胞集団(Lin-Kit+Tie2+)との比較を試みた。その結果、Lin-Kit+Tie2+細胞のうち、SP分画に存在する幹細胞は10-20%で、残りはMain Population(MP)分画に存在することが明らかとなった。そこで、SPとMPの幹細胞の遺伝子発現の比較をしたところ、p21,p57,E2Fなどの細胞周期制御因子、Sir2などの寿命関連遺伝子などに差が見いだされた。また、p21ノックアウトマウスでは、SP分画の減少があり、連続骨髄移植によって幹細胞の自己複製能の低下を指摘した論文に一致する結果を得た。今後、これら細胞周期遺伝子、あるいは寿命遺伝子の個体変異マウスを作成して、それらの分子の未分化性維持に関わる機能を解析する。 2)また、次下のような特徴的な細胞集団の純化に成功した。A)造血幹細胞、B)血管内皮前駆細胞、さらにC)造血幹細胞と血管平滑筋細胞には分化するが、内皮細胞には分化しない集団が存在する。準備的データであるが、成体骨髄においては、血管内皮前駆細胞は造血幹細胞とは異なりKit陰性・Flk-1陽性分画に存在することが明らかとなった。成体においては、胎生期と同じようにHemangioblastが存在するか否か、再検討を要する。今後、造血幹細胞と血管内皮前駆細胞の遺伝子発現の異同を詳細に解析する。
|