血液凝固第VIII(FVIII)あるいは第IX因子(FIX)遺伝子異常である血友病AあるいはBの治療中に時として同種抗体(インヒビター)が発生する。インヒビター治療にはリコンビナント活性型第VII因子製剤(rFVIIa)が用いられるが、その半減期は短く、一定レベルの持続的な発現がインヒビター患者の出血予防となる可能性があり、以下の遺伝子工学的操作を行いFVIIaとして細胞外へ分泌されるメカニズムを持たせた治療用ベクターをデザインした。(1)ベクタープラスミドのデザイン ヒトFVIIcDNAはPollak E.(The Children's Hospital of Philadelphia.)から供与を受けた。これをCMVプロモーターとともに5'、3'両端にITRを有するAAVベースのプラスミドに組み込んだ。(2)活性型FVII発現カセットの作製FVIIは細胞外分泌時にFVIIaとなる必要がある。第X因子(FX)が分泌される際、furin/PACEがRKRというアミノ酸配列を認識し開裂させ成熟FXとなることが既知であり、この9塩基をFVII重鎖-軽鎖間に遺伝子工学的手法を用いて挿入した。9塩基を組み込んだ重鎖3'、軽鎖5'プライマーをデザインしPCR法を用いて各々を増幅した後、末端にBam HIをリンカーした重鎖5'、軽鎖3'プライマーで全長を増幅し制限酵素処理後、Insert DNAを得た。Bam HIサイトで挿入されたFVIIcDNAを切り出したベクターDNAとこれをLigationしFVIIa発現カセットを有するプラスミドが得られている。今後本ベクタープラスミドのRKR配列の確認を行った後、293細胞を用いて評価していく予定である。
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