研究概要 |
本研究において、尿細管再生に関わる研究としては、マウスES細胞および内因性幹細胞様尿細管細胞を用いて尿細管幹細胞の分化再生をおこなった。申請者は、マウスES細胞をEB(embryoid body)細胞に分化させる際、HGFおよび、Activinを添加すると水チャネル(Aquaporin 2)を発現することを確認している。このことは、ES細胞から集合尿細管細胞を分化、誘導できることが、示唆され、さらに尿細管を再生できる可能性がある。また申請者は、胎生期にのみ腎に発現し、尿細管細胞の発生、分化に関与するWnt4と、尿細管細胞の細胞増殖に関与する転写因子E2F1に注目した。急性腎不全(ARF)での近位尿細管細胞は一旦細胞がapoptosisあるいは、necrosisに陥り脱落するが、24-48時間の間に、近位尿細管細胞は再生し、盛んに分裂、増殖をし、近位尿細管は再生する。このときの再生、増殖の時期に、Wnt4とE2F1が近位尿細管が劇的に発現亢進することを、ラットの虚血性急性腎不全モデルにおいて申請者らは、はじめて確認し、アメリカ腎臓病学会にて発表した。Ets-1の発現により、cyclin D1,cyclin Aの転写亢進がおこり、尿細管細胞の再生、分化が誘導されると考えられる。これらの知見は腎細胞の再生の研究の一助になるものと考えられる。
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