退行期骨粗鬆症では加齢にともなう骨量の減少と骨の微細構造の変化から脆弱性が亢進し、それに基づき骨折を引き起こしやすい状態となっている。とくに高齢者の生活の質を著しく低下させるため、本症の病態の解明と治療法の確立が強く望まれている。近年ビタミンKが、骨粗鬆症治療薬として有効であることが日本独自の臨床研究により発見された。ビタミンKの作用は、(1)ビタミンK依存性蛋白を介する作用と、(2)骨への直接作用を含むそれ以外の作用から成り立っている。その作用を解明するためには、(1)と(2)の作用を分離する必要があり、その目的で(1)の作用を改変させたモデル動物を作製して解析する。ビタミンK依存性ガンマカルボキシラーゼのマウスcDNAを単離同定し、マウスゲノム上の遺伝子を構造決定した。この遺伝子を欠失もしくは過剰発現させるためのDNAベクターを作製し、遺伝子改変マウスを作製中した。またその他のビタミンK依存性蛋白の遺伝子改変動物も作製中である。今後それら動物を用いて、ビタミンKの骨作用を解析し、骨粗鬆症治療薬としての作用のメカニズムを明らかする。また(2)に関してはビタミンKが骨の細胞において作用する核内受容体を見出した。この作用経路の個体における役割を知るためには、動物モデルを作製する必要があり、現在遺伝子導入ベクターを構築している。これらの動物モデルを解析し、またモデル動物由来の骨組織、骨細胞を用いてビタミンKの基本的作用機構を解明してゆく。
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