PTHrPはcAMP経路を介してインスリン含量とそのmRNA発現を増加させる。この効果はラット膵島や継代数の少ないMIN6細胞で顕著に見られる。我々は、PTHrP/cAMP経路がMAPキナーゼ特異的ホスファターゼ(MKP)群を高発現させることと、MKPがインスリン発現を増加させ、β細胞を長期生存させることを見出した。MKPは現在9種類知られており、各MKP特異的プライマーによるPCRで、膵β細胞では少なくとも5種類のMKPが発現していた。このうちMKP-1のみがPTHrPで誘導されることをノザンブロットで確認した。β細胞でMKPのターゲットとなるMAPキナゼをそのインヒビターで調べた。ERK1/2に特異的なPD98059はインスリン発現に影響を与えなかった。しかしP38とJNKに特異的なSB203585はインスリン発現を上昇させ、そのdoseとp38及びJNKのリン酸化型の解析からSB203585の効果はJNKの阻害によると推測された。そこでJNKを特異的に阻害するSP600125をMIN6に作用させるとインスリン量とインスリンmRNAが用量依存的に増加した。MKP-1をアデノウィルスベクターでβ細胞に導入すると、β細胞は長期生存するのみならずインスリン発現が増加した。ところでMKP-1の阻害剤Ro-31-8220はMKP-依存的インスリン発現を完全に抑制した。従ってMKP-1が成熟β細胞のインスリン発現を制御していることが明らかとなった。
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