研究課題/領域番号 |
14657272
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
永井 克也 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (70029966)
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研究分担者 |
奥村 宣明 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教授 (20224173)
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キーワード | ラット / 運動 / 日内リズム / カルノシナーゼ / カルノシン合成酵素 / 糖尿病 / 高血圧 / 2-deoxy-D-glucose |
研究概要 |
ある量のL-carnosineの脳内、腹腔内、胃内投与は糖利用阻害剤である2-deoxy-D-glucose(2DG)のラット脳内投与による高血糖反応(2DG高血糖反応)を抑制した。この効果はL-carnosineによる血中インスリン濃度の上昇とグルカゴン濃度の低下により起ることを示す結果を得た。更に、2DG高血糖反応を抑制する量のL-carnosineをウレタン麻酔ラットの静脈内に投与すると副腎、肝臓および腎臓を支配する交感神経の活動を低下させて、膵臓と腸管を支配する副交感神経の活動を上昇させた。また、これらのL-carnosineの作用はヒスタミンのH3受容体の阻害剤であるthioperamideにより抑制された。これらの結果はL-carnosineがH3受容体を介して自律神経の活動を制御し、膵臓や副腎のホルモン分泌を調節して、血糖低下作用を持つことを示している。そこで、血中L-carnosine濃度および分解酵素であるcarnosinase活性の日内変化を検討したところ、血中L-carnosine濃度には活動期(暗期)の終わりに最高値を示す日内リズムがあることが明らかになった。更に、血中carnosinase活性について検討したところ、この酵素活性にはL-carnosine濃度と平行した活性の日内リズムが存在することが明かとなった。自律神経活動の変化から、L-carnosineは血圧を低下させる作用があることが考えられたので、DOCA-salt高血圧ラットにL-carnosine含有食を与えたところ、0.001%及び0.0001%carnosine食がDOCA-salt高血圧ラットの血圧を低下させる効果を持つことが明かとなった。更に、運動の効果を検討するために飼育ケージに輪回しを装着したところ、1日に3千回以上輪回しを行うラットでは暗期の中間の血中carnosine濃度が輪回しを装着しないラットと比べて有意に高値をとることが明らかになった。以上の事実はL-carnosineが自律神経系の制御を介して、血糖や血圧を下げる役割を持つことを示唆する。
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