研究概要 |
本研究では、大腸癌リンパ節転移における腫瘍細胞のCD44発現とそのリガンドであるヒアルロン酸との相互作用についてヌードマウス同所移植自然転移モデルを用いて解析した。 ヒト大腸癌細胞株はLS174T、LS174T-NEO、LS174T-AS1,-AS2、Colo320、CloneAを用いた。LS174T-AS1,-AS2はLS174Tにantisense CD44を組み込んだ発現ベクターを導入して樹立された細胞株であり、LS174T-NEOはコントロールとしてantisense CD44を含まない発現ベクターを遺伝子導入した細胞株である。CD44の発現はFlow Cytometryで確認した。マウス盲腸組織のリンパ管像を観察するために抗マウスVEGFR-3抗体を用いて、免疫染色を行った。CD44発現とリンパ節との接着性との関連性を検討する目的で正常リンパ節の凍結切片を用いてStamper-Woodruff assayを行った。 CD44はLS174T、LS174T-NEOが強発現株、LS174T-AS1は弱発現株、LS174T-AS2はほぼ完全に発現が抑制された細胞株、CloneAは弱発現株であり、Colo320は無発現の細胞株であった。ヌードマウス同所移植で、CD44強発現株であるLS174T、LS174T-NEOが90%にリンパ節転移を形成した(n=10)。CD44弱発現株であるLS174T-AS1、CloneAはそれぞれ40%、30%(いずれもn=10)のリンパ節転移形成率であった。CD44発現がほぼ完全に抑制された細胞株あるいは無発現株であるLS174T-AS2、Colo320はリンパ節転移を形成しなかった。マウス盲腸組織のリンパ管免疫染色では、LS174T-NEOで高度のリンパ管侵襲像が観察された。LS174T-AS2、Colo320ではリンパ管侵襲像をほとんど認めなかった。cloneAでは、中等度のリンパ管侵襲像が観察された。Stamper-Woodruff assayでは、CD44強発現株であるLS174T、LS174T-NEOで正常リンパ節に対して著明な接着を認めた。一方、CD44発現抑制株であるLS174T-AS1,-AS2は、正常リンパ節に対する接着性が有意に低下していた。ヒアルロニダーゼで処理した場合のStamper-Woodruff assayでは、CD44強発現株であるLS174T、LS174T-NEOとも、ほとんど接着を認めなかった。 大腸癌細胞株におけるリンパ管侵襲、リンパ節転移にはCD44の発現とそのリガンドであるヒアルロン酸との相互作用が重要であることが示唆された。
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