研究概要 |
本年度の研究では、(1)臍帯血(HUCB)由来造血幹細胞の肝細胞への分化誘導の検討: 1)In vitroではHUCB細胞は培養7日目より蛍光染色でヒトAFP,アルブミン,CK19の発現を認めた。AFPは培養7日目にピークを認め、以後漸減し、アルブミンおよびCK19は時間の経過とともに陽性細胞が増加した。アルブミンは培養開始21日目には全細胞中50%以上において陽性を示した。またRT-PCRではアルブミン,AFP, transferrin, GS, CK19は7日以降において陽性を示した。2)In vivoにおけるFasLを用いた障害肝組織のHE染色では、門脈および中心静脈の構築を保ちつつ広範な肝細胞の脱落を認めたが、胆管に障害は認めなかった。肝組織の免疫染色ではヒトアルブミンおよびヒト肝細胞特異的抗体で陽性細胞を認めた。ヒトアルブミンの全肝細胞あたりの陽性細胞出現率はHUCB細胞移植群0.39%、CD34陽性細胞移植群0.40%、CD34陰性細胞移植群0.39%であり、各細胞群において有意差は認められなかった。また、FISHによる検討においても陽性シグナルを認め、各細胞群による差は認められなかった。さらに、RT-PCRではヒトアルブミン,AFP, transferrin, GSの発現はコントロール群とHUCB細胞にはなく、各治療群に認めた。細胞移植1ヵ月後の生存率はコントロールが69.2%(9/13)であったのに対し、細胞移植群においては100%(14/14)であった。以上の研究から、HUCB細胞がin vitroおよびin vivoにおいてhepatocyte-like細胞へと分化した。CD34は肝幹細胞の抗原マーカーとはならなかった。急性肝障害モデルにおいてコントロールに比べて細胞移植群で生存率向上を認めたことから細胞移植療法の臨床応用の可能性が示唆された。(2)HUCB細胞から、間葉系幹細胞を分離・培養する方法を開発した。さらにGFP遺伝子を発現するアデノおよびレンチウイルスベクターを用い、間葉系幹細胞への遺伝子導入の効率、遺伝子発現効率、発現期間および細胞毒性に関して検討を行った。その結果、レンチウイルスベクターが、間葉系幹細胞への遺伝子導入には適している事を、明らかにした。
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