| 研究概要 |
これまで我々は,分岐鎖アミノ酸の1つであるL-Valine (Val)の小腸粘膜に対する効果に着目し,5-fluorouracil (5-FU)腹腔内投与による腸炎誘発モデルラットに対し,腸炎誘発と同時にValを添加した中心静脈栄養輸液(TPN)を投与することで,その小腸粘膜再生・増殖効果を確認してきた.
今回,中心静脈カテーテル挿入後より5-FUを添加した輸液を3日間投与することで,小腸粘膜障害モデルラットを新たに作製.腸炎を発生させた後(4日目)からControl TPNあるいはVal添加TPNを投与することで,小腸粘膜障害の治療効果について検討を行った.その結果,Control TPNに比し,4倍のVal濃度のTPNにて,血清及び小腸粘膜内Val濃度の上昇傾向がみられ,空腸・回腸共に絨毛高,表面積,陰窩深,粘膜蛋白量が最も増加することがわかり,粘膜障害の早期治療効果が確認された.さらに,細胞周期のG_1・S・G_2期に発現し,細胞増殖の指標の1つとなるKi-67免疫染色でも陽性細胞の増加が認められ,粘膜増殖促進の裏付けの一端が得られた.
また,5-FU腹腔内投与による腸炎誘発モデルラットに,5%Val溶液を1日2回経口投与してその効果を検討したところ,やはり小腸絨毛高,表面積,陰窩深,粘膜蛋白量が増加することが判明し,Val添加TPN同様,経口投与でも小腸粘膜再生・増殖効果が得られることを初めて証明した.
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