研究概要 |
近年健康食品が注目され、とくに癌との関連で、東洋世界で汎用されている食用キノコ、椎茸が注目されている。実験腫瘍にはF344ラットにdiethylnitrosamine腹腔内投与で樹立した肝癌でこれを皮下移植して得られた自然肺転移巣をin vivo selectionして作製したGKS-HL腫瘍(中分化型肝癌)を用い、被検物質である椎茸菌糸体抽出物(Lentinus edodes mycelia, LEM)は小林製薬より供与を受けたLEM原末を固形飼料に0.3,0.9%になるように配合したLEM含有飼料を用いた。LEMの抗腫瘍効果を、ラット自然高肺転移モデル(GKS-HL)と癌性腹膜炎モデルを用いて検討した。(1)腫瘍皮下移植で作製した自然高肺転移モデルに、0.3%LEMを経口投与すると原発巣、肺転移巣とも有意の抑制がみられた(抑制率:原発巣に対し47.4%、肺転移率に対し42.9%)。(2)腫瘍腹腔内移植で作製した癌性腹膜炎モデルでは0.3%LEMの経口投与で、生存率が有意に延長し、血性腹水と腹腔内転移腫瘍結節量が有意に少なかった(抑制率60.6%)。(3)上記効果は0.9%LEM投与時には軽度で、LEMは至適濃度依存性に作用する可能性が示唆された。また、癌性腹膜炎モデルでLEM経口投与により腹水が消失し、腹腔内移植後80日目に同系腫瘍を再移植したが、これを拒絶したことから、何らかの機序で特異的抗腫瘍免疫が誘導された可能性が示唆された。健康食品としてのLEMはBRM(biological response modifier)的作用により相当程度の抗腫瘍効果を示すので、臨床応用の可能性が示唆された。
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