研究概要 |
本研究では、我々の入手している肝幹細胞、骨髄細胞をもとに、それらに共通して混在していると思われる"体性"多能性幹細胞を同定し、分離・精製することを目的として研究を開始した。我々が胎仔及び成体マウスから分離した肝幹細胞においては(安近ら,Hepatology,2002)(東ら,Hepatology,2003)、その詳細な特性解析の過程で肝幹細胞特異的な未知遺伝子を同定しつつあり、これらの遺伝子をマーカーとして用いることで、我々の獲得している肝幹細胞分画中に、より未分化な細胞が含まれていないかにつき現在検討を進めている。また、肝幹細胞から成熟肝細胞への分化誘導法の検討の過程にて幹細胞の分化誘導に必須と思われる細胞集団の同定・分離を行い(北方ら,Hepatology,2004,in press)、この細胞と肝幹細胞との細胞間相互作用を検討することで肝細胞系に分化誘導する新たな因子の同定、さらには骨髄細胞から肝細胞系へと分化可能な細胞集団の同定・分離法の確立が可能かどうかにつき検討している。この過程で我々は、肝臓中に骨髄細胞由来の星細胞が存在することを解明した(馬場ら,Journal of Hepatology,2004)。さらに、生殖細胞系列などのより未分化な細胞のみに発現することが知られているOct3/4のプロモーター下にgreen fluorescent protein(GFP)発現を示すトランスジェニックマウスを用いることで、現在我々が入手している肝幹細胞や骨髄細胞中からより未分化な細胞分離の検討を行っている。現在までに肝幹細胞中にはGFP陽性細胞は認められないが、骨髄細胞中にはGFP陽性の未分化細胞の存在を示唆する結果が得られており、flow cytometryにおいて幹細胞特性の一つと考えられるSide Population分画との相関関係を検討している。
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