研究概要 |
進行直腸癌に対しての治療の個別化を図る指標としてセンチネルリンパ節(SLN)同定の臨床学的意義について検討を行なった。 1)進行直腸癌における跳躍転移 跳躍転移は,腫瘍近傍のリンパ節を飛び越えて高位のリンパ節への直接転移を云い,これは事実上SLNを意味する。教室のDukes C直腸癌150例のうち1個のリンパ節に転移を認めた42例を対象にSLNを検討したところ,9例(6%)にSLNが認められた。また,いずれのSLNも術前の画像からの診断は困難なものであった。 2)直腸癌におけるSLNの同定 Tc-99m Snコロイドを使用して直腸癌におけるSLNの同定を試みた。その結果、平均4.5個(1-10個)のSLNが認められ,その同定率は87.5%であった。抗サイトケラチン抗体(CAM5.2)を使用した免疫組織学的染色を加えた組織学検討では,1例の微小転移を含めた8例にリンパ節転移が認められ,陽性率は87.5%であった。最終的にSLNを指標としたリンパ節の転移診断の正診率は92.9%であった。 3)偽陰性例の検討 同定法の精度を上げる目的から偽陰性例を臨床病理学的検討した。臨床学的には,病変の深達度がAi, SE,占居部位として肛門管にかかる病変および管腔に対して占居率の高い病変において偽陰性率が高かった。また、これらの組織学的特徴の一つにリンパ節において転移した腫瘍細胞の占居率が高い場合(約60%以上)やリンパ節外の転移(節外転移)があり,SLNの臨床応用にいたってはこれらの所見はセンチネルリンパ節のコンセプトの成立が難しく,除外して検討していくことが望ましいと推察された。
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