研究概要 |
心臓移植における急性拒絶反応の際には,グラフト心筋細胞上の組織適合抗原(以下MHC抗原と略す)のクラスI抗原ならびにクラスII抗原の発現が高まることが知られている.このMHC抗原自体が急性拒絶反応での標的抗原であり,その発現が高まることでさらに宿主側による抗原認識と組織攻撃が進み,結果として移植組織廃絶へと至る.このMHC抗原の発現増強にはインターフェロンγ(IFN-γ)が大きく関与していることが知られており,IFN-γレセプター(IFN-γR)を介した細胞内シグナルによってMHC抗原の発現が高まる. 本研究は将来の心筋細胞移植における拒絶反応抵抗性心筋細胞開発を目的として,移植心筋細胞にインターフェロンγレセプター(IFN-γR)の発現を抑制する遺伝子導入を行い,拒絶反応を受けにくい移植心筋細胞の開発をすすめるものである. 【方法及び結果】IFN-γRのヘテロ二量体のうちの一つであるIFN-γR1のプロモーター領域の転写因子結合部位の遺伝子配列に相当するshort sequence DNAを複数個組み込んだ遺伝子コンストラクトを作成した.心筋細胞はC57BL/6マウス新生児心よりコラゲナーゼを用いて分離し,in vitroにて培養した.現在までのところ,分離したマウス新生児心筋細胞のviabilityは良好で,in vitroにて拍動下に培養可能であるが,primary cultureした分離心筋細胞への遺伝子導入効率に問題があることから,最適な遺伝子導入法の検討を行っているところである.また培養細胞株ではトランスフェクタントの作成が比較的容易であることより,現在この問題を解決する方策として,Dr. W. Claycombよりin vitroにて拍動可能な培養心筋細胞株を入手し,この細胞株を用いた遺伝子導入を行うことを検討中である.
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