研究概要 |
骨髄由来幹細胞から肺胞上皮への分化の可能性を検証するために、BALB/Cマウスに1200cGyの放射線照射後、全身の細胞にgreen fluorescence protein : GFPを発現しているトランスジェニックマウスの骨髄細胞を移植し、キメラマウスを作成して骨髄由来細胞の肺組織への分布を検討した。骨髄移植1ヶ月後の骨髄キメラ率は90%に達した。キメラマウスを移植後1週,4週,12週に犠牲死せしめ移植骨髄細胞の肺組織(肺胞上皮,気管支粘膜上皮,肺胞間質等)への移行を蛍光顕微鏡で検討した.移植後1週には肺組織内に蛍光陽性細胞が出現し、4週、12週後には蛍光陽性細胞数はさらに増加した。これらの蛍光陽性細胞の存在部位を特定すべく、キメラマウス肺を抗GFP抗体(蛍光細胞に対する抗体)にて染色し、明視野下で観察したところ、肺胞上皮、間質に陽性細胞が認められ、血管内皮細胞、マクロファージなどへの分化傾向が認められた。この結果を得て,キメラマウス肺における蛍光細胞の分化を特定すべく,さらに抗GFP抗体と細胞特異的マーカー(上皮系に反応するサイトケラチン,II型肺胞上皮に特異的な抗SP-D抗体やマクロファージに反応するF4/80,血管内皮細胞に反応する抗factorVIII抗体等)を用いて検討した。その結果、少数の内皮細胞がGFP陽性となる像を確認することはできたが、肺胞上皮あるいは細気管支上皮に分化した細胞は確認されなかった。
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