研究概要 |
1個50万円程度と超低価格の拍動型血液ポンプの実用化を目指し,その基盤となる真空成形法によるポンプ安定生産の確立を重点的に行なった.1)真空成形用シート材料,2)金型形状,3)製作条件の項目について1から見直し,また,本研究対象である旋回渦流型血液ポンプ形状を数値流体力学的観点からも最適化することを試みた.まず,真空成形用材料には熱可塑性のポリウレタン(T8185,日本ユニポリマー)を使用し,均一な厚さを得るために射出成形で加工前シートを製作した.ポンプは,ハウジング,ダイアフラム,ベースの3パーツをそれぞれ製作し,その後それらを高周波で溶着させる方針とした.ハウジングは流入口と流出口のなす角度が55度と3次元的な構造を有しているので,その金型に関しては流入ポートとその他の部分をそれぞれ製作した後に溶接して一体化させ,表面を鏡面仕上げした。これらの製作したモールドを用いて真空成形法でポンプパーツの製作を行い,品質安定のための製作条件を検討した.最終的に加熱温度580℃の条件で,ハウジングでは81秒,ベースでは72秒,ダイアフラムでは9.5秒の加熱時間で型どおりの成形品を得られた.また,成形品の厚さ分布を測定した結果,ハウジング,ベース,ダイアフラムのそれぞれで平均値に対するばらつきは±8%以内,±3%以内,±5%以内となり,安定した品質の拍動ポンプを製作可能となった.合わせて,真空成形した3つのパーツを高周波で溶着する条件も検討中であり,今後の見通しを立てる基礎データを得ることができた.以上より,各パーツの製作及びそれらの接着を含めてもポンプ1個あたり1時間以内で製作可能となり,安価で大量生産可能なシステムができた.一方,生体膜構造を模擬して分子設計したMPCポリマーの安定生産,及びクリーンルーム内でのポンプ血液接触面の簡易なコーティング技術も合わせて確立できた.
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