研究概要 |
腫瘍免疫における抗腫瘍エフェクターの中心は細胞障害性Tリンパ球(CTL)と考えられるが、CTLの感作・活性化にはサイトカインヘルプが必要となる。そのサイトカイン産生細胞の中心がCD4+T細胞であるが、本研究は腫瘍特異的なCD4陽性Tリンパ球の樹立・解析のために本年度は以下の実験を行った。 (1)肺癌切除症例から癌細胞株の樹立を試み,19細胞株を得た。細胞表面にMHC class II分子を表出する株を3株認めた。腫瘍特異的Tリンパ球の誘導効率を上げるために、得られた腫瘍細胞株にCD80分子をstable transfectionした細胞株を樹立した。 (2)MHC class II陽性細胞株症例の手術時に採取し保存しておいた所属リンパ節リンパ球を、MHC class II陽性CD80移入自己腫瘍細胞株と共培養し、限界希釈法によりCD8陽性T cell cloneが3クローン、およびCD4陽性T cell cloneが14 clone得られた。CD8 cloneは自己腫瘍特異的細胞障害活性を示した。CD4陽性クローンの、自己腫瘍と自己EB-virus transformed B cell (EBV-B)に対する反応性をIFN-γ産生能で評価した。13 cloneは自己腫瘍とEBV-Bともに反応を示し、抗MHC class II抗体でその産生が抑制された。CD4陽性T cell cloneの内1 cloneは自己腫瘍のみに反応しIFN-γを産制し、その活性は抗MHC class II抗体添加で抑制された。 以上の結果より、肺癌患者生体内には腫瘍細胞のMHC class II分子に提示される、自己抗原と腫瘍特異抗原を認識するCD4陽性細胞が存在することが証明された。
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