研究概要 |
腫瘍免疫における抗腫瘍エフェクターの中心は細胞障害性Tリンパ球(CTL)と考えられるが、CTLの感作・活性化にはサイトカインヘルプが必要となる。そのサイトカイン産生細胞の中心がCD4+T細胞であるが、腫瘍特異的なCD4陽性T細胞およびCD8陽性T細胞の樹立・解析のために本年度は以下の実験を行った。 悪性黒色腫腋窩リンパ節転移巣より腫瘍細胞株、G613Mを樹立した。腫瘍細胞のHLA class I及びclass IIの発現をフローサイトメトリーで調べたところ、両者ともに有意な発現を認めた。次に、患者末梢血リンパ球をIL-2,IL-4,IL-7存在下に、放射線照射した自己腫瘍細胞で週1回、計5回刺激培養した後、限界希釈法を行ない11個のT細胞クローンについて解析を行なった。フローサイトメトリーにより7クローンはCD8陽性T細胞であり、4クローンはCD4陽性T細胞であった。CD4陽性T細胞は自己腫瘍に反応しMHC class II拘束性にIFN-γを産生した。さらに7クローンのCD8陽性T細胞についてさらに機能解析を行ない以下の結果を得た。 (1)7つのCD8陽性T細胞クローンはいずれも51Cr放出試験で自己腫瘍に対して細胞障害活性を示し、自己のEB-Virus transformed B cellやK562は障害しなかった。CTLは自己腫瘍に反応しIFN-γを産生し、抗HLA-class I抗体、抗HLA-B/C抗体添加により反応が阻害された。 (2)得られたCTLが他家腫瘍を認識するか、サイトカイン産生により検討したところ、得られたCTLは以下の3つのパターンに分類された。 1.HLA-Cw1203拘束性に自己腫瘍及び他家肺癌細胞株を認識する 2.HLA-Cw1202拘束性に他家melanoma細胞株、他家肺癌細胞株を認識する 3.自己腫瘍のみ認識し、他家腫瘍を認識しない
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