研究概要 |
・アストロサイトは中枢神経系を構成する主要なグリア細胞である。正常ヒトアストロサイトの培養系を用い,オピオイドペプチドLVV-hemorphin-7刺激によるアストロサイトにおけるplasminogen activator inhibitor-1 (PAI-1)の発現を検討した。LVV-hemorphin-7はヘモグロビンβ鎖由来のフラグメントであり,脳のアンギオテンシンIV受容体に結合する内因性リガンドでもある。PAI-1は線溶抑制ばかりでなく間質保護にも関与しているらしいといわれる。LVV-hemorphin-7刺激アストロサイトにおいて,PAI-1のmRNA及びタンパク質発現の誘導を,逆転写PCR(RT-PCR)法及び酵素免疫(EUSA)法により測定した。LVV-hemorphin-7刺激により時間・濃度依存的にアストロサイトのPAI-1発現が増加した。LVV-hemorphin-7はアストロサイトのPAI-1分泌を高め,脳内細胞外基質の再構成に寄与している可能性がある。 ・現在,アンギオテンシンIV受容体に対する拮抗阻害薬Nle^1,Leu^3-angiotensin IVを安定な作動薬Nle^1-angiotensin IVとともに入手できたので,上記のLVV-hemorphin-7の作用がはたしてアンギオテンシンIV受容体を介するか否かについて検討中である。 ・今後,虚血を想定した低酸素の影響や腫瘍細胞株U251における発現について検討を進める予定である。 ・これに先立ち条件検討を進めていた,低酸素培養実験では,脳虚血・炎症に伴い増加することが知られている血小板活性化因子が正常ヒトアストロサイトにおける血管内皮増殖因子の産生を増強することを明らかにした(Brain Research 2002;944(1,2):65-72)。
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