研究概要 |
本研究は、Structure-Based Drug Design (SBDD)法を用いて、コンピュータ上でデザインされたペプチドが、本当に細胞内あるいは生体内で機能するのか、あるいは医療に役立つ可能性があるのかを細胞内シグナル解析を中心に検討し、実用化医療への応用の可能性を探ることを目的としている。そこで、本年度は東京薬科大学・田沼靖一教授らが疎水度相補性理論に基づいてFas ligandを鋳型にデザインした機能性ペプチドFRP (Fas ligand-related peptide)の機能評価を培養ヒトグリオーマ細胞で行った。はじめにFRPを添加されたヒトグリオーマ細胞においてCaspase 3,8,9の活性が誘導されたか否かをEIAまたはウエスタンブロット法で調べた。その結果、抗Fas抗体を投与したときと同様、Caspase群が活性化されていた。また、同時にエンドヌクレアーゼの活性化も認められた。そのときの形態学的変化をビデオ強化型微分干渉顕微鏡及び共焦点レーザー顕微鏡で観察したところ、アポトーシスであった。同様の結果は、悪性黒色腫や卵巣がんの細胞株でも確認できた。次にヒト脳腫瘍細胞をヌードマウス脳内に移植して作製した脳腫瘍モデルを使って、in vivoでのFRPの効果を観察した。FRPは定位脳手術装置を使って直接脳腫瘍内に注入した。FRPで治療された群では、無治療群と比較し、有意な腫瘍抑制と生存期間の延長が確認された。また、機能性ペプチドを結合したリポソームの検討も行った。一方、実用化を目指した取り組みとして、研究対象となった機能性ペプチドの大量調製法の可能性を探るための基盤研究をスタートした。具体的には、機能性ペプチドの遺伝子を大腸菌に導入し、産生させた後、カラム操作を中心に蛋白の純化を行う方法を検討している。
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