研究概要 |
本研究では、Structure-Based Drug Design (SBDD)法を用いて、コンピュータ上でデザインされたペプチドが、本当に細胞内あるいは生体内で機能するのか、あるいは医療に役立つ可能性があるのかを細胞内シグナル解析を中心に検討し、実用化医療への応用の可能性を探った。昨年度は、東京薬科大学・田沼靖一教授らが疎水度相補性理論に基いてデザインした機能性ペプチドFRP (Fas ligand-related peptide)の機能評価をヒトグリオーマ、悪性黒色腫、卵巣がんの培養細胞株で用いて検討し、期待された生物学的機能を有することを確認した。これを受けて本年度は、ヒトグリオーマ及び悪性黒色腫の培養細胞株を用いて、さらに詳細に細胞内シグナルを調べた。その結果、これらの細胞株ではCaspase 3,8,9の活性をネガティブにコントロールしているX-linked inhibitor of apoptosis protein (XIAP)の発現状況が極めて大きな影響を与えていることがわかった。そこで、このXIAPの機能を抑制するためのsiRNAをデザインし、FRPの生物学的機能、とりわけアポトーシスの誘導能が増強されるか否かを検討した。その結果期待した通りFRPのアポトーシス誘導能は有意に増強した。このことは、XIAPの抑制と、アポトーシス誘導タンパクとのコンビネーションが極めて効果的な治療になりうる可能を示したものとして注目される。一方、実用化を目指した取り組みとして、平成15年7月の改正薬事法に照らし合わせて、GCP (good clinical practice)体制化でのペプチド調整を可能にする品質管理体制整備を開始した。今後これらを通して機能性ペプチドFRP等の臨床応用を目指したい。
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