研究課題/領域番号 |
14657345
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
小林 誠 山口大学, 医学部, 教授 (80225515)
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研究分担者 |
佐藤 正史 山口大学, 医学部, 助手 (20346547)
最上 紀美子 山口大学, 医学部, 助手 (80263771)
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キーワード | 脳血管 / 血管平滑筋 / カルシウム / 血管異常収縮 / 血管緊張 / カルシウム非依存性収縮 / スフィンゴ脂質 |
研究概要 |
脳血管攣縮は、クモ膜下出血後の重篤な合併症であり、その原因として、Rhoキナーゼによる血管平滑筋のCa2+非依存性の異常収縮が注目されている。従って、このCa2+非依存性収縮を引き起こすメカニズムとその原因因子を解明することによって、脳血管攣縮の根本的な予防法や治療法を開発することが、国民衛生上の緊急・最重要課題である。 本研究では、スキンド血管にリコンビナント蛋白を導入すること、細胞質Ca2+濃度と血管張力の同時測定、標的分子の細胞内分布、等の手法を駆使して、下記の結果を得た。 1)脳血管において、スフィンゴ脂質の1種であるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)は、細胞質Ca2+濃度を変化させることなく、異常収縮を引き起こした。このSPCによる異常収縮は、Rhoキナーゼ阻害薬で完全に抑制された。 2)スキンド脳血管において、SPCは、Ca2+非依存性収縮を引き起こした。このSPCによる収縮は、G蛋白の活性化に必要なGTPが無い状態でも発生した。このSPCによる収縮は、Rhoキナーゼのドミナント・ネガティブ体によって、完全に阻害された。 3)血管平滑筋細胞において、SPCは、Rhoキナーゼを細胞質から細胞膜へ移動させた。 4)プロテインキナーゼC(PKC)の偽基質ペプチドは、PKC活性化薬によるCa2+非依存性収縮を完全に阻害したが、SPCによる収縮には無効であった。逆に、SPCによる収縮を完全に阻害するRhoキナーゼのドミナント・ネガティブ体は、PKC活性化薬によるCa2+非依存性収縮には無効であった。 以上の結果により、1)SPCは、Rhoキナーゼの上流にあって、血管のCa2+非依存性収縮を引き起こす新規のシグナル分子である事、2)SPC-Rhoキナーゼ経路は、G蛋白やPKCとは独立した機構である事が判明した。
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