研究概要 |
H14年度中は臨床症例のCT画像を利用し,改良中の骨強度解析ソフトウェアを用い,実際大腿骨頚部骨折を起こした患者4人の非骨折側の大腿骨頚部と健常人1人の大腿骨頚部に対し,片脚起立時と転倒時の姿勢を模擬した荷重拘束条件下で,それぞれの強度及び骨折危険領域の評価を行った。その結果,患者群では,200kg強の荷重量で片脚起立時、転倒時とも大腿骨頚部で骨折が予想されたのは3人で,片脚起立時では大腿骨頚部、転倒時では大腿骨転子部で骨折が予想されたのが1人であった。健常人の解析では大腿骨頚部に骨折が生じたが,必要な荷重量は患者群の3倍であった。臨床上いわゆる大腿骨頚部骨折は大腿骨の頚部か転子部かに起こる。本研究の方法による解析結果はすべて臨床上実際に生じる現象と一致した。また骨折の発生に必要な荷重量は日常生活中に大腿骨にかかる荷重量からみて合理的な量であり,本研究で得た結果は信頼できるものと考える。来年度以降は計画に則り上記結果をさらに分析し,予備実験後にヒト骨標本を利用した実証実験をおこなう予定である。また,H14年度内には,骨強度がやや低い延長骨の骨強度についても本法で解析検討した。体重量荷重時における延長脛骨の重要な力学的特性である主歪とヤング率を計算し,同一患者の健側骨のデータと比較検討した。またソフトウェア上で擬似3点曲げ試験も延長骨と同一患者の健側骨で比較検討した。その結果、延長骨の主歪は健側のより大きく,ヤング率は健側のより小さかった。すなわち,延長骨の骨強度は健側のより小さかった。擬似3点曲げ試験の結果も同様であった。しかし時間とともに延長骨の骨特性は健常骨に近づいていった。これらの結果はX線写真等の臨床上の現象と一致していた。本研究で開発中の骨強度解析ソフトウェアは骨粗鬆症患者だけでなく,他の疾患で骨強度の低い患者にも応用できると思われる。
|