14年度の計画は運動神経の再生芽が脊髄の中から出芽してくることを直接証明するためにGFPあるいはLacZ遺伝子組み替えアデノウイルスで標識した切断末梢神経の再生を観察し、脊髄深部へ侵入する繊維を顕微解剖的に剖出しながら再生芽の出芽部位を確認することであった。しかし次の三つの理由により、本研究目的を達するために観察技術の再検討を行う必要が生じた。 1:観察を行う際に固定しただけでは組織の中に励起光が届かず、脊髄深部に向かって伸びる線維の蛍光を追うことができず、剖出作業ができない。そこでグリセリン処理をして透明化し、線維の走行を確認しながら行った。ところが、蛍光の消失が特に高濃度のグリセリンの中で起き、この方法で目的を達せられないことがわかった。 2:GFP遺伝子組み替えアデノウイルス標識は完全に連続した一本の線として観察されることがなく、途切れた線になっていた。特に脊髄の中に侵入して極めて細い線維となったところでは断裂が著しく、ほとんど点線のようになって観察され、分岐か否かの判定が極めて困難であることがわかった。 3:LacZ標識では発色基質が脊髄深部へ浸透せず、標識繊維の発色がないため追跡できなかった。 現在行っている観察技術の再検討 1:透徹剤の検討:GFP標識の特徴になる点線状に見える線維の改善は期待できないが、透徹用グリセリンを市販のVECTASHIELDに変え検討中である。透明化も強力で、蛍光消失も無いように見える。 2:Tau-LacZ遺伝子組み替えアデノウイルスによる標識と発色基質浸透促進技術の改良: 発色基質の浸透を高めるために、マイクロウエーブ脱灰装置の応用を検討中である。さらに神経軸索の中の構造蛋白である微小管の材料を運ぶTau蛋白とLacZの遺伝子を組み合わせ、組み替えたアデノウイルスで標識することで細胞骨格が標識され、標識の連続性も高まることが期待できる。
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