研究概要 |
ヒト骨折および骨折後偽関節症例の検体試料を収集し、組織学的解析と共に免疫組織学的検討を加えた。組織学的検討の結果では、1)軟骨細胞増殖を伴う内軟骨性骨化領域、2)骨芽細胞増殖を伴う骨形成領域、3)線維軟骨領域、4)線維芽細胞増殖を伴う線維組織領域といった所見が認められた。1、2は骨折治癒過程の所見、3,4は,癒合不全の所見と考えられた。これらの試料を用いて、III型コラーゲン、オステオポンチン、オステオネクチン、および破骨細胞マーカーとしてMMP-9、TRAPの免疫組織染色を行った。その結果、癒合不全部位の線維芽細胞や線維軟骨細胞でIII型コラーゲン、オステオネクチンが陽性で、骨癒合部の骨芽細胞や肥大軟骨細胞でオステオポンチンが陽性であった。また、MMP-9,TRAPの陽性細胞は骨癒合部にてより多く認められた。これらの結果は、骨癒合不全部位で、分化の障害された線維芽細胞や線維軟骨細胞が増殖している一方で、骨癒合部ではオステオポンチン陽性の分化した骨軟骨細胞が増殖しており骨のリモデリングも進行していることを示す結果であり、骨折癒合不全のマーカーとしてIII型コラーゲンやオステオネクチンが、骨癒合のマーカーとしてオステオポンチンやMMP-9,TRAPが有用となる可能性を示唆し、オステオポンチンが骨癒合のための標的因子となり得ることを示す。今後これらの物質とその制御因子である骨形成因子に標的を絞り、分子生物学的な側面からの解析を行う予定である。
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