研究課題
Vascular endothelial growth factor(VEGF)は血管新生および骨形成に重要な因子であるが、ヒト骨芽細胞分化誘導段階における役割については未だ不明な点が多い。今回、我々は、「hMSCが骨芽細胞へと分化していく過程でVEGF分泌量が増加し、血管新生を促すとともに骨基質を産生する」との仮定の下に実験を行った。Dexamethasone(Dex)による骨芽細胞への分化誘導過程で、VEGF発現量に変化を認めるかを検討し、同時に、骨芽細胞のマーカーであるAlkaline Phosphatase(ALP)・Osteocalcin(OC)の発現量を比較した。分化段階はRT-PCRによるOCの発現をもって判定した。RT-PCRでは4種類のVEGF isoformを検出したが、Northern blotによりVEGF_<121>・VEGF_<165>が主要なisoformであり、分化が進むにつれてその発現量が増加していることが明らかとなった。VEGF_<121>は塩基性Domainを持たず、VEGFR-2に対する結合力はVEGF_<165>より劣るが、重要な血管新生誘導因子である。そのレセプターであるVEGFR-1・VEGFR-2の発現については、RT-PCRでともに検出されなかった。Neuropilin-1は、VEGF_<165>とVEGFR-2の結合をcoreceptorとして増強し、シグナル伝達活性を促進するはたらきを有するが、Exon 7を持たないVEGF_<121>とは結合できないという報告もあり、分化誘導骨芽細胞におけるNeuropilin-1の役割と、VEGF_<121>の効果については、更なる研究が必要であろうと思われる。以上より、hMSCから骨芽細胞系譜へと分化誘導された細胞は、VEGFの発現が増加し、血管侵入に有利な環境をつくるものと考えられた。また、初期分化段階における骨芽細胞増殖には直接的に関与しないことを示した。また、骨芽細胞自身の分泌するVEGFは主に血管内皮細胞に作用することが示唆された。
すべて その他
すべて 文献書誌 (2件)