研究概要 |
(目的)関節軟骨欠損に対する、軟骨細胞移植における培養担体として、乳酸ポリマー(PLLA)とβ-三リン酸カルシウム(β-TCP)の有効性を検討した。 実験1担体上にて単層培養 (方法)培養担体としてPLLA-PGAポリマー(分子量5,000、分子量15,000)およびβ-TCP上でウサギ膝関節由来軟骨細胞の培養を行った。直径約3mmの円柱状に加工したそれぞれの担体上に1ccあたり、1.0x10^6個の細胞を播種した。培養開始後約3週間で組織を固定、組織学的評価、走査型電子顕微鏡で観察した。 (結果)PLLA-PGAポリマー(分子量5,000)は培養開始後約5日で、同(分子量15,000)は2週間で加水分解によるものと考えられる溶解が生じ、細胞培養の続行が不能となった。β-TCPは細胞播種時に、播種した細胞の6割の流出・浮遊を認めた。肉眼的には細胞層の厚みはほとんどなかった。光学顕微鏡でβ-TCP表面に細胞の接着を認めたが、比較的粗であった。走査型電子顕微鏡では、細胞の接着、進展をみとめ、細胞外マトリックスと考えられる線維状の構造が細胞周囲に認められた。 実験2β-TCP上における高密度細胞培養 (方法)単層培養のみでは厚みをもった組織に培養するのは困難と考え、高密度培養方法を検討した。 (1)コラーゲンゲル包埋高密度培養:ウシ由来I型コラーゲンゲルに、溶液1ccあたり、1x10^6の細胞を包埋し、β-TCP上でゲル化させた。 (2)高密度細胞懸濁液滴下:実験1で使用したβ-TCP上に、1x10^7の細胞を滴下し、滴下時に細胞が担体表面から流失しないように円筒形の容器の中で行った。 (結果)コラーゲンゲルを使用した場合、軟骨層の厚みは任意にコントロールすることが可能であった。高密度細胞懸濁液では、厚みは1mm程度しか得られなかった。組織学的には、両者とも軟骨に類似した細胞外マトリックスを呈していた。 (考察)PLLA-PGAポリマーは、長期間のex vivoでの培養は困難と考えられ、更なる高分子量の材料もしくは、ポリマーの組成を変えて、検討する必要があると考えられた。β-TCPは軟骨細胞、間葉系幹細胞両者とも、接着、進展を認め、コラーゲンゲルを軟骨層に使用した場合、任意の軟骨層の厚みを得ることができた。今後、ウサギの関節軟骨欠損モデルに移植しさらなる改良・検討を加えていく予定である。
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