研究課題
骨軟骨組織を含めた再生医学の発展のためには、ヒト未分化細胞の分化誘導機構を明らかにする必要がある。そのためには外来遺伝子導入が極めて困難な骨髄由来の間葉系幹細胞に対し、遺伝子導入が容易で、かつ骨、軟骨、脂肪、筋肉等への多分化能を有するヒト由来の未分化細胞株が切望される。我々は以前、当教室で新生児背部から摘出した過誤腫の一部から分離した培養細胞が、骨や軟骨、脂肪、筋肉細胞に分化誘導でき、かつリポフェクタミン法で簡便に遺伝子導入が可能であることを確認した。しかし30回以上の長期継代では、徐々に分化能とともに増殖能も低下した。そこで細胞株の樹立を目指し、simian virus由来のプロトオンコジーンであるSV40 Large-T antigenの遺伝子を導入した。その結果in vitro条件下において、BMP-2やデキサメサゾン等の刺激で骨芽細胞に、TGF-betaで軟骨に、PPAR-gammaで脂肪細胞に分化誘導可能である2種の独立した細胞株を樹立することが出来た。また低血清培養で平滑筋細胞にも分化誘導可能であった。この際、それぞれの細胞譜系特異的なマーカー遺伝子の発現を伴っていた。そしてこれら細胞を吸収性のコラーゲンスポンジ内で三次元培養し、SCIDマウス皮下に移植すると、上記の細胞譜系に分化した。以上の結果からこれら細胞株は、間葉系細胞からの分化過程を解析するにあたり、ヒト由来細胞として、今後DNAチップやプロテオミクス技術を用いた初期応答遺伝子や蛋白の検索に有用と考えられる。現在、専門学術誌に投稿中である。
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